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~カイルの小冒険その21~

「ほほほほほっ、ようやく捕まえたわ!もう逃がさないわよ!!」
耳をつんざく様な高笑いと共に女の人が穴を覗き込んできました。

「…あら?随分と縮んでしまった様に見えるけれど……」
「いいえ、これは人違いだと思われます」

女の人の後ろに控えているメイドが適切なツッコミを入れてくれました。

~カイルの小冒険その20~

ずんずん歩いていると、突然カイルの足下が崩れ落ちました。
落とし穴です!!

とっさに壁に爪を突き立てたので穴の底まで落ちることは免れました。
さすが子供とはいえ吸血鬼の膂力です。
そうでなければ、今頃カイルは滅びていたかもしれません。
だって、

穴の底には、びっしりと突き立てられた白木の杭がこちらへ鋭い先端を向けているのですから。

~カイルの小冒険その19~

でも、とカイルは思い直しました。
カイルが知ってるその人は長い髪でしたし、それになにより

「おー、カイル、久しぶりだな」

こんなキャラではありません。
そうです、彼の兄はギャグキャラでは無いはずです。

会わなかった事にして、カイルは足早にその場を立ち去る事にしました。

「あ、いいのか?そっち行くと…」

彼が何か言っていた様ですがカイルは無視してしまいました。
いけませんね、あの人が意味深な事を言う時は必ず何かあるのですよ…。

~カイルの小冒険その18~

そんなカイルの前に、ふわりと闇が舞い降りました。
月が翳ったのかと思いましたが、いいえ、違いました。

それは、目の前に立っている男の人のコートでした。
夜の闇よりなお暗い色をしたコートをまとったその人は、ようやく足下で見上げているカイルに気付いた様です。
じっと見下ろす黄金色の瞳は吸い込まれそうな美しさです。

この男の人と同じ髪と瞳の色、そして同じ顔をした人をカイルは知っています。
まさか……

~カイルの小冒険その17~


「由美、探したわよ!」

木陰から現れた女の人に呼ばれて、おねぇさんは駆け寄って行きました。
「お姉ちゃん!」
とても嬉しそうです。

そう言えば自分にもお兄さんがいた事をカイルは思い出しました。
でも、こんな風に仲が良いわけではありませんが。

カイルはそっとその場を離れて歩き出しました。
またひとりぼっちです。

~カイルの小冒険その16~

ひとりぼっちじゃなくなってちょっとだけ気持ちに余裕が出てきたカイルは、このおねぇさんをおどかしてやろうと言うイタズラ心を起こしてしまいました。

「ほらほらー、ボク、吸血鬼なんだぞ」

と牙を見せてみましたが、おねぇさんの反応はイマイチです。

「夜の学校に比べたらこんな世界なんてぬるいわ」

この人もなかなかの修羅場をくぐっている様です。

~カイルの小冒険その15~

声の主を、木の反対側に見つけました。
どうやらこの女の人も道に迷ってしまったらしいです。

一人よりは二人の方がいいので、カイルとその人は一緒に道を探すことにしました。

~カイルの小冒険その14~

いつの間にか森の奥深くまで来てしまいました。
おうちへの道ももう分かりません。
カイルは急に心細くなってしまい、木の根本に座り込みました。
やっぱり母上様の言うことを聞いて家から出るのではなかったとカイルは泣きたくなりました。

「…シクシクシク……」

ところが、カイルが泣く前に、どこからか啜り泣く声が小さく聞こえてくるではありませんか。
なのに、辺りを見回しても誰もいません。

~カイルの小冒険その13~

突然二つの風を切る音がしてカイルの頭上で白い光と硬い音が弾けました。

ひとつは目の前の男の人が再び抜いた剣、そしてもうひとつは・・・・・・

「チッ、ガキかよ」

目つきの悪い男がカイルを睨み付けていました。
片手には嫌な感じのする剣を握っています。

「いきなり何するんだ」

黒髪の男の人が怒鳴りましたが、相手は聞いていない様です。

「ま、吸血鬼には違いない。おい坊主、このガキ置いてとっとと行きな」
「ふざけるな。子供相手に何する気だよ。
おい、何だかやばそうだ。お前は今の内に自分の家へお帰り」
「待てこのガキ!」

男の人達が打ち合っている隙に、カイルはほうほうの体でその場から逃げ出しました。

~カイルの小冒険その12~

『「えっ、子供…?!」

驚く声と共に剣はすぐに引っ込められました。

「ごめんよ坊や、大丈夫か?」

カイルと同じ黒髪の男の人がいます。

「また魔物かと思ってさ。さっきも狼男に襲われかけたし。…立てるかい?」

腰が抜けたまま動けないカイルへ手を差し伸べてくれた時…』