カイルの小冒険」カテゴリーアーカイブ

~カイルの小冒険その17~


「由美、探したわよ!」

木陰から現れた女の人に呼ばれて、おねぇさんは駆け寄って行きました。
「お姉ちゃん!」
とても嬉しそうです。

そう言えば自分にもお兄さんがいた事をカイルは思い出しました。
でも、こんな風に仲が良いわけではありませんが。

カイルはそっとその場を離れて歩き出しました。
またひとりぼっちです。

~カイルの小冒険その16~

ひとりぼっちじゃなくなってちょっとだけ気持ちに余裕が出てきたカイルは、このおねぇさんをおどかしてやろうと言うイタズラ心を起こしてしまいました。

「ほらほらー、ボク、吸血鬼なんだぞ」

と牙を見せてみましたが、おねぇさんの反応はイマイチです。

「夜の学校に比べたらこんな世界なんてぬるいわ」

この人もなかなかの修羅場をくぐっている様です。

~カイルの小冒険その15~

声の主を、木の反対側に見つけました。
どうやらこの女の人も道に迷ってしまったらしいです。

一人よりは二人の方がいいので、カイルとその人は一緒に道を探すことにしました。

~カイルの小冒険その14~

いつの間にか森の奥深くまで来てしまいました。
おうちへの道ももう分かりません。
カイルは急に心細くなってしまい、木の根本に座り込みました。
やっぱり母上様の言うことを聞いて家から出るのではなかったとカイルは泣きたくなりました。

「…シクシクシク……」

ところが、カイルが泣く前に、どこからか啜り泣く声が小さく聞こえてくるではありませんか。
なのに、辺りを見回しても誰もいません。

~カイルの小冒険その13~

突然二つの風を切る音がしてカイルの頭上で白い光と硬い音が弾けました。

ひとつは目の前の男の人が再び抜いた剣、そしてもうひとつは・・・・・・

「チッ、ガキかよ」

目つきの悪い男がカイルを睨み付けていました。
片手には嫌な感じのする剣を握っています。

「いきなり何するんだ」

黒髪の男の人が怒鳴りましたが、相手は聞いていない様です。

「ま、吸血鬼には違いない。おい坊主、このガキ置いてとっとと行きな」
「ふざけるな。子供相手に何する気だよ。
おい、何だかやばそうだ。お前は今の内に自分の家へお帰り」
「待てこのガキ!」

男の人達が打ち合っている隙に、カイルはほうほうの体でその場から逃げ出しました。

~カイルの小冒険その12~

『「えっ、子供…?!」

驚く声と共に剣はすぐに引っ込められました。

「ごめんよ坊や、大丈夫か?」

カイルと同じ黒髪の男の人がいます。

「また魔物かと思ってさ。さっきも狼男に襲われかけたし。…立てるかい?」

腰が抜けたまま動けないカイルへ手を差し伸べてくれた時…』

~カイルの小冒険その11~


「何だろ…?今の人」

尻餅をついたままカイルが呆気にとられていると、突然
鋭く光る剣が目の前に突きつけられました… 」

~カイルの小冒険その10~


「待ちなさい!!逃がすかこのバカ蝙蝠ぃぃぃ!!」

怒濤の勢いで現れた女の人はカイルを跳ね飛ばし、あっと言う間に蝙蝠と共に森の奥へと消えて行ってしまいました…」

~カイルの小冒険その9~

「あれぇ…?」

カイルが首を傾げていると、頭上を一羽の蝙蝠がすごい速さで飛び去っていきました。
あれは誰かの使い魔でしょうか。
でも母上がカイルを探して遣わしたにしては、見覚えのない蝙蝠です。

ぼうっとカイルがそのまま蝙蝠が飛び去った方向を眺めていると…」

~カイルの小冒険その8~

「「この私の目を盗んでボールを持ち出すなんて、いい度胸してるわね」

どうやらカイルがボールを取ったと思っているみたいです。
慌ててカイルは、半泣きになりながら女の子が落としていったものだと説明しました。
「・・・・・・・・・・ふぅん、わたしの仕業だったの」
よく分かりませんが、おねぇさんはどうやら納得してくれたみたいです。
あの女の子を知っているみたいです。

「ボールを取り返してくれたお礼に、これをあげるわ。拾ったものだけど、きっと役に立つでしょう」

ボールと引き替えに、カイルは一枚の紙を貰いました。
それは二人の絵…いいえ、二人の女の子が写った写真です。
「これはだれ…」
カイルが再び顔を上げた時、目の前にいたはずの女の人の姿は影も形もなくなっていました…」