カイルの小冒険」カテゴリーアーカイブ

~カイルの小冒険その27~

「願いは叶えたっ。じゃーね!」

口元をぬぐうと、女の人は笑いながら森の奥へと去って行きました。

「…まだ取れてなかったけどなぁ」

見送るカイルの前に、その女の人がくるりと戻って来ました。
何故か地響きも聞こえます。

「ぎゃああああ出たぁぁぁぁぁ」
女の人の叫びと共に、森が揺れました。

見たこともないモンスターを連れて!

~カイルの小冒険その26~

「ありがとおおおお!甘い豆のお菓子なんて珍しいけどおいしいいいい!!」

女の人は、カイルが差し出した焼き菓子を一息に食べてしまいました。

「ふう、ようやく元気が出て来た。きみは命の恩人だわ。
何かお礼をするからお金がかからない願い事を言ってみて」

女の人がそう言ったので、とりあえずカイルは言いました。

「まず、口の周り拭いた方がいいと思います」

~カイルの小冒険その25~

折角食べ物を貰ったけれど、カイルはあまりお腹がすいていません。
どうしようかな、と思っていると

「お腹が減ったよぅ…」

ちょうどお腹を減らしている人がいました。

~カイルの小冒険その24~

「こんなところに落ちてるワケないわよね~…」

うなだれてる女の人を改めて見て、ああ、やっぱりそうだ、とカイルは思いました。
長い黒髪の女の人に貰った写真に写っている人です。
よくよく見れば、写っているもう一人は先ほど迷子になっていた妹と再会した人でした。

「あの……」

気になってカイルは声をかけてみました。

「うん?どうしたの坊や・・・・・・って、あああ!それっ!!その写真!!」

カイルが手に持っていた写真に気づいた女の人の顔がみるみる晴れました。
どうやらこの写真が捜し物だった様です。
「ありがと~!お礼に新発売の大判焼きをあげるわ。冷めても美味しいから」

写真を受け取ったお姉さんはニコニコ笑顔でカイルに茶色いお菓子(?)を渡し、去っていきました。

~カイルの小冒険その23~

このままここに座り込んでいても始まりません。
カイルはまた歩き始めました。

「・・・・・・どーしよう・・・・・・」

何か捜し物をしているらしい人がいました。

(あれ…?)

カイルは首を傾げました。
遠目だけれど、知らない人だけれど、その人のことをどこかで見たような気がするのです…

~カイルの小冒険その22~

「失礼を致しました。お怪我はございませんか?」

メイドが手を差し伸べて引き上げてくれました。
さっきの女の人はぷりぷりしながら留めてあった馬車にさっさと引っ込んでしまいました。
助けてくれたお礼を言うカイルの顔を、彼女は何故かじっと見つめています。
カイルがどきどきしていると、

「…妹も貴方の御手を煩わせてしまうと存じますが、その時はどうぞ、御力を御貸し下さいませ……」

意味深な囁きを残して、メイドさんも行ってしまいました。

~カイルの小冒険その21~

「ほほほほほっ、ようやく捕まえたわ!もう逃がさないわよ!!」
耳をつんざく様な高笑いと共に女の人が穴を覗き込んできました。

「…あら?随分と縮んでしまった様に見えるけれど……」
「いいえ、これは人違いだと思われます」

女の人の後ろに控えているメイドが適切なツッコミを入れてくれました。

~カイルの小冒険その20~

ずんずん歩いていると、突然カイルの足下が崩れ落ちました。
落とし穴です!!

とっさに壁に爪を突き立てたので穴の底まで落ちることは免れました。
さすが子供とはいえ吸血鬼の膂力です。
そうでなければ、今頃カイルは滅びていたかもしれません。
だって、

穴の底には、びっしりと突き立てられた白木の杭がこちらへ鋭い先端を向けているのですから。

~カイルの小冒険その19~

でも、とカイルは思い直しました。
カイルが知ってるその人は長い髪でしたし、それになにより

「おー、カイル、久しぶりだな」

こんなキャラではありません。
そうです、彼の兄はギャグキャラでは無いはずです。

会わなかった事にして、カイルは足早にその場を立ち去る事にしました。

「あ、いいのか?そっち行くと…」

彼が何か言っていた様ですがカイルは無視してしまいました。
いけませんね、あの人が意味深な事を言う時は必ず何かあるのですよ…。

~カイルの小冒険その18~

そんなカイルの前に、ふわりと闇が舞い降りました。
月が翳ったのかと思いましたが、いいえ、違いました。

それは、目の前に立っている男の人のコートでした。
夜の闇よりなお暗い色をしたコートをまとったその人は、ようやく足下で見上げているカイルに気付いた様です。
じっと見下ろす黄金色の瞳は吸い込まれそうな美しさです。

この男の人と同じ髪と瞳の色、そして同じ顔をした人をカイルは知っています。
まさか……