いつの間にやら世界は寒く白くなっています。
雪です。
「明けない夜は無いと言うけれど……貴方の物語はまだこれからです」
「雪の館で……お会いしましょう」
そうして、雪に溶け込むようにふうっと消えてしまいました。
「いや、捨てられたワケじゃ…」
言いかけて、カイルは気付きました。
(この子、目が…)
「帰る家が無いのなら、わたしと来る? お父様がそこまでお迎えに来てくれてるの」
そう話す少女の背後から、何故か遠く重い地響きがしてきます。
「ありがとう。でも僕も帰るところだから」
何だか怖い予感がするし、だいたい帰る家もあるので、カイルは断りました。
「そう。気をつけてね。森は優しいけれど、怖い時もあるから」
既に散々怖い目に遭ってます。
いや、それも森のせいだけじゃ無いけど。
そしてカイルは、危なげない足取りで森の奥へと消えていく少女を見送りました。
館の外がこんなにも大変な事ばかりなのだとしみじみ思い返すと、カイルは何だか泣きたくなりました。
その様子を見た女の人の方が動揺しています。
「ちょっと、急に泣かないでよ、男の子でしょ?! ああもう、これじゃあたしが悪いヤツみたいじゃない!!」
ナイフを引っこめた女の人は、何故かぷりぷり怒りながら森の奥へと行ってしまいました。
黒猫と狼との追いかけっこの疲れも出て、カイルが半泣きで膝を抱えて蹲っていると、
「あなたも、森に捨てられたの?」
さっきとは別の女の子が、目の前に佇んでいました。
「あら、可愛いぼうや」
カイルが歩いていると、今度は黒い子猫に出会いました。
とても人懐こい様で、カイルを見て逃げるどころか、擦り寄ってきます。
「ねえ、アタシを飼わない?」
積極的過ぎます。