カテゴリー別アーカイブ: カイルの小冒険

カイルの小冒険44

散々走り回り、さしもの吸血鬼も息を切らせて立ち止まりました。
恐る恐る振り返りましたが、どうやら猫も狼もうまく撒けた様です。
カイルは安堵の息をつきました。

「あぁら、可愛いお坊ちゃま♪」

目の前の声に慌てて顔を上げると、白い刃が煌めきました。

「いい身なりですこと。哀れな貧民に、何か金目のものをお恵み下さいません?」

笑顔だけれど、目は笑っていません。
今夜会う女の人達って怖い人ばかりな気がします。

カイルの小冒険43

「じゃあ僕はこの辺で失礼します」

カイルは二頭に挨拶をして、くるりと背を向け、その場から走り出しました。

ところが、どうしたことか黒猫がついてくるではありませんか!
当然のなりゆきで、黒猫を追って狼までもが追いかけてきました!

子供とは言え、夜の吸血鬼です。
並の相手では追いつけない筈ですが、この二頭はタダモノでは無かったみたい。
余裕でついてきています。

「やっぱりおうちを出るんじゃ無かった…!」

今夜何度目かの後悔を噛みしめながら、カイルはひたすら森の中を駆け回りました。

カイルの小冒険42

「俺の女を横取りするたぁガキの癖にいい度胸してるじゃねえか」

今度は、灰色の狼が現れました。
とんでもない殺気を放ちながらカイルを睨んでいます。
よく分かりませんが、とりあえずこの黒猫から離れた方が良さそうです。

カイルの小冒険41

「あら、可愛いぼうや」

カイルが歩いていると、今度は黒い子猫に出会いました。
とても人懐こい様で、カイルを見て逃げるどころか、擦り寄ってきます。

「ねえ、アタシを飼わない?」

カイルの小冒険

積極的過ぎます。

カイルの小冒険40

それでもカイルが動けないでいると、

「吸血鬼には沁みる歌だよなぁ……」

カイルの小冒険40

いつの間にか、傍にこれまた知らない男の人がいて、しんみりと歌に聴き入っています。
燃える様な赤毛の、ちょっとガラの悪そうな人です。

「お前、こんな子供なのに吸血鬼なのか。哀れだな…。俺の子供時代もそりゃあ悲惨だったけど……」

何だか長い自分語りが始まりそうだったので、カイルは早々にその場から立ち去ることにしました。

カイルの小冒険39

とても綺麗な歌にカイルは聴き入ってしまい、思わず白い女の人の元へ行こうとすると、
新規キャンバス
「この歌は子供には早い。永い夜を生きる、我らだけのものだ」

そう言って男の人に止められました。
その人は、長い髪を前にも垂らしているから右の顔が隠れています。

カイルの小冒険38

目の前の涙にカイルがどうしようとオロオロしていると、歌が聞こえてきました。
透き通った声の、とても綺麗な歌です。
カイルの小冒険

声の方を見ると、白い女の人が歌っていました。